H31 『達磨大師』 A

無地色紙

  大津絵では非常に稀な、墨一色で描かれた図です。
  注文者の要望でこうなったのか、それとも「達磨図」といえば墨描きであろうと大津絵師が考えたのか、初出時の経緯は今となっては分かりません。

  大津絵の特徴が原色の泥絵の具の派手な色彩であると考えていると、うっかり見落としてしまいそうな図柄ですが、筆法は他の大津絵と共通しています。

  「達磨大師」はダルマ人形でも御馴染みの、5〜6世紀に活躍した中国の禅僧です。生まれはインドで、中国に渡って禅の教えを広め、その後の日本の禅宗にも大きな影響を及ぼしました。 禅宗で“祖師”と言えば、この達磨大師を指します。

  赤く丸いダルマ人形が日本に伝わったのは江戸時代のこととされ、縁起物として人気を博しました。
  ダルマ人形に手足が無いのは、達磨大師が壁に向かって9年座禅を続けた際、両手足が腐って落ちたという伝説に由来しています。もっとも、これは後年創られた挿話で、事実ではありません。
 おそらく、その伝説の由来となったのは、達磨大師の説く“壁観”の教えだと言われています。“壁観”は、その正確な意味は難しく、今でも議論の対象となっています。”壁面を観るが如くす”の意だとも、“壁の如く動ぜず真理を観ずる”とも解釈できます。
 何れにせよ、達磨大師の教えはその後の禅の源流であり、坐禅の思想にも受け継がれていきます。

 「一忍成百事 一静鎮百動」




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