千本の手で衆生を漏れなく救うとされる「千手観音」の図。
八対の手に省略していますが、それでも大津絵にしては凝った図柄です。
この図で手にする宝珠や宝弓などは、おおよそ決まりに則って描かれていますが、左右逆の手にすべきものもあり、細事に拘らない大津絵特有の配列となっています。
デザイン上の要因を優先したためだと思われ、蓮の花など、上記とは違う物を手にした図もあります。
最初期の古大津絵が最も細密に描かれており、時代を経るにつれ、細部を省略したり、より描きやすい形に変化していくのは、『三尊来迎図』や『青面金剛』など他の大津絵仏画と同じです。 |