大津絵では最も有名な図柄、『鬼の寒念仏』ですが、あまり見かけないスタイルです。
初期(元禄期)の頃のものと比べると、筆致はやや粗く、泥絵具を薄く彩色しています。幕末期の描き殴ったような描線ではありませんので、江戸後期(18c後半)くらいに生まれたものでしょうか。
背に番傘、手に撞木と大福帳、腹に鉦といった小道具は、『鬼の寒念仏』に共通する小道具で、この絵も例外ではありません。
しかしながら、他図では折れている左角が、この鬼では折れずに直立しています。大津絵の『鬼の寒念仏』で、角が折れていないものは、かなり珍しいでしょう。
|