江戸浮世絵では、美人画や役者絵と並び人気の高かった相撲図ですが、大津絵にもこの古典的な『相撲』の図が伝わっています。 しかし、一般的な相撲図と比べると、かなり特異な印象を持つ方も多いのではないでしょうか。 奇手“河津掛け”を仕掛けた瞬間を絵にしたもので、図では肌色の力士が仕掛けた方、鼠色の力士が仕掛けられた方となります。 確かに絵にしやすい構図には違いないのですが、なぜこの特殊な技を選んだのかは、江戸当時の絵師に聞いてみないと分からないところです。 二人の力士の体色が、肌色と鼠色に塗り分けられているのも、対比効果を狙ったものでしょう。 片方の身体が鼠色なのは、力の強い者を表現する際にはよくあるもので、大津絵では定番の『弁慶』なども、鼠に塗られることが多い図です。 この『相撲』図は、その後、二人の力士を“外法(寿老人)”と“大黒”に置き換えられ、風刺画として好評を博すことになりました。 |