M02 『弁慶の立ち往生』 A

無地色紙

 大津絵に登場する弁慶には、牛若丸と出会う前の「釣鐘弁慶」の図と、この「弁慶の立ち往生」とがあります。
 立ち往生とは、衣川(岩手)での弁慶最後の姿で、「長刀(ナギナタ)弁慶」とも「弁慶の七つ道具」とも呼びます。

 江戸後期の大津絵十種にこそ「釣鐘弁慶」が選ばれましたが、現在ではこの「立ち往生」の図の方が人気があるようです。

 長刀(なぎなた)・箙刀(えびらがたな)・首掻刀(くびかきがたな)・小反刃(こそりば)・熊手が本来の七つ道具ですが、大津絵は鉞(まさかり)・袖がらみ・槌・鋸・鎌・刺股と入れ替えています。
 形と筆運びを主眼としたからでしょう。
 絵になれば故実を無視するところも大津絵のおおらかさです。

 この絵にある道歌も
「時にかなふ七つ道具は人の情むさしといふはわたくしでさふろ」
 とありますが、立ち死にの気配を無視しています。

「武蔵坊慈悲さへあれば七つ道具長刀いらず国はおさまる」




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