G05 『鬼と柊』

無地色紙

 大津絵に登場する鬼は、「鬼の寒念仏」にしろ、「鬼三味線」にしろ、非常に人間くさく、憎めない姿に描かれています。
 これは、鬼を擬人化しているのではなく、人を鬼に置き換えて描いているからです。
 そのまま人の姿で描けばどぎつくなる諷刺も、鬼の姿を借りることで、印象は和らぎ、しかし、かえってその鋭さは増すのです。

 この「鬼と柊」もそんな、鬼の登場する諷刺画です。
 鼠がくわえているのは、柊(ひいらぎ)の葉と鰯の頭であり、どちらも邪気・悪霊をはらう効能があると言われています。

 屈強な鬼にも弱点はあり、それを突かれれば、鼠が相手でも逃げまどうばかり。
 誰にでも苦手な物はあるということですが、自分を鬼に当てはめるか、それとも鼠にするかは見る人次第です。




関連画像
『福は外』
『鬼の寒念仏』
『福は内』 B

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