大津絵に登場する鬼は、「鬼の寒念仏」にしろ、「鬼三味線」にしろ、非常に人間くさく、憎めない姿に描かれています。
これは、鬼を擬人化しているのではなく、人を鬼に置き換えて描いているからです。 そのまま人の姿で描けばどぎつくなる諷刺も、鬼の姿を借りることで、印象は和らぎ、しかし、かえってその鋭さは増すのです。 この「鬼と柊」もそんな、鬼の登場する諷刺画です。 鼠がくわえているのは、柊(ひいらぎ)の葉と鰯の頭であり、どちらも邪気・悪霊をはらう効能があると言われています。 屈強な鬼にも弱点はあり、それを突かれれば、鼠が相手でも逃げまどうばかり。 誰にでも苦手な物はあるということですが、自分を鬼に当てはめるか、それとも鼠にするかは見る人次第です。 |