『鬼の寒念佛』と並び、元禄期からの代表的な絵です。
歌舞伎や舞踊に取り入れられ、 一層有名になりました。
大津絵ではこの黒い着物に藤柄というのが、 最も標準的です。
シキミ(樒)を持って踊る愛宕山参りの風俗から生まれた図とも言われていますが、大津絵師がなぜ藤を持たせたのか、その出自ははっきりとしません。
添えられる道歌も、その謎めいた部分を反映したような響きがあります。
「見る人も心にかけよ藤の花 長くもあれば短くもあり」
「盛りとぞ見る目も共に行く水のしばし止まらぬ藤浪の花」
江戸後期以降には良縁の符としても売られました。
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