藤若衆

W07 『藤若衆』

無地色紙

 座頭が犬に褌を銜えられる様子を描いた図で、目が不自由だからこそ気をつけているはずが、意外なものに足元をすくわれることがあるという風刺画です。
 現在ではあまり人気のある絵とは言えませんが、かつては大津絵十種に選ばれるほどで、種類も多く創られています。

 確かに現代人の感覚で、盲人を嘲笑した絵と取れば、受け入れられないのも無理はありません。
 ただ、この絵の時代の「座頭」というのは幕府の公認と保護を受けた有る程度の権威を持つ「当道座」に所属する人間であり、庶民にすれば、しばしば悪徳高利業者として描かれることのある「検校」を頭とする組織の一員でした。
 座頭そのものはその組織の下位の人間であるものの、この絵ではそういった「権威」の象徴として扱われています。
 「鬼の寒念佛」で僧を、「奴」で武士を笑い飛ばしたように、この絵で笑われたのはそういった「座」そのものでした。

 座頭が狼狽する姿は、庶民を省みない権威はいずれその庶民の突き上げをくらうだろう、といった意味を持っています。
 そのような事情が有る絵ですが、時代の趨勢としては消えるのも致し方ないのかもしれません。




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