G03 『鬼三味線』 A

泥地色紙

 鬼は大津絵にとって欠かせない登場人物であり、そに画種も数多くあります。最も人気があるのは、やはり「鬼の寒念仏」ですが、この「鬼の三味線」もそれに次いで有名な画題です。

 本来は鬼の案外粋な姿も面白かろうという意図のものだったかもしれませんが、江戸の中期頃から心学者によって、戒めの道歌が添えられるようになりました。

「目には酒 耳にはやさしき三味の音に ひかれてさらに鬼と思はず」
「一口にとりてくふのは目にも見ず 三味線かじる鬼ぞおそろし」
「聞くままにひかれこそすれ 三味線のおともかもなき 身をしらざれば」

 酒や遊興の類は、鬼に喰われるように身を滅ぼすという教えにこと寄せ、すべて人間の惰情をいましめたものです。

 もっとも、大津絵に登場する鬼はどれも滑稽で人間臭く、この三味線をつま弾く鬼も例外ではありません。
 この絵の人気が高いのは、風流を解す鬼に親近感を覚える人が多いからではないでしょうか。





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